住民税「時間差課税」アンケート 分析レポート
被害実態アンケート n=280・請求元187自治体(自治体名の判明分)/集計値・自由記述・属性クロスに基づく(2026年8月12日時点・回答受付中)
1・2. 回答者の属性と、収入減の状況(Q1〜Q9)
Q4性別n=279
女性 148 (53%)
男性 125 (45%)
その他 3 (1%)
答えたくない 3 (1%)
Q5収入が減る前の職業n=280
正社員・公務員 176 (63%)
契約社員・派遣社員・パート・アルバイト 75 (27%)
自営業・フリーランス・個人事業主 18 (6%)
分からない(本人以外の経験について回答) 2 (1%)
主婦 1 (0%)
年金生活 1 (0%)
Q7b収入の減少幅n=280
全額なくなった(10割減) 120 (43%)
4〜6割減った 55 (20%)
6〜8割減った 45 (16%)
2〜4割減った 27 (10%)
8割以上減った 24 (9%)
2割未満 5 (2%)
Q9c国民年金の免除状況n=273
全額請求された(免除を受けられなかった) 109 (40%)
一部免除された 46 (17%)
覚えていない・分からない 41 (15%)
請求されなかった(厚生年金加入など) 34 (12%)
全額免除された 32 (12%)
納付猶予・学生納付特例を受けた 11 (4%)
3. 減免制度の認知と申請プロセス(Q10〜Q20)
各設問の右欄の見方:上段(白地)は集計値にもとづく分析。下段(色地・▸)は自由記述からの引用(一部要約)で、「窓口で言われた言葉」は回答者が記録した窓口の発言、「回答者の声」は回答者自身の意見・体験。
Q10減免制度をいつ知ったかn=275
制度があること自体を知らなかった 188 (68%)
期限前に知った(自分で調べて・知人やSNSで) 27 (10%)
覚えていない 20 (7%)
期限前に知った(市のHP・広報・納税通知書で) 13 (5%)
申請期限の後に知った 12 (4%)
期限前に知った(役所の窓口や電話で教えられて) 9 (3%)
最も多いのは「制度があること自体を知らなかった」68%。最も少ないのは「窓口や電話で知った」3%。役所の側から知らせた例が最少で、知った人の多くは自力か、税額が決まった後。減免は、使う前提の周知がされていない。
▸ 回答者の声:「病気で退職に追い込まれて働けないのに、制度を何も教えてくれない」
Q11公開情報で対象か判断できたかn=280
公開情報を見ていない 177 (63%)
判断できなかった 58 (21%)
減免の基準を見つけられなかった 28 (10%)
判断できた 16 (6%)
減免の基準が公開されていなかった 1 (0%)
市のサイトや広報を見て「自分が対象か判断できた」人は最少の6%。最多は「そもそも公開情報を見ていない」63%。情報を見なかった人が多いうえ、見た人の大半も判断できていない。「公開している」が「伝わっている」を意味しない。
Q12公開情報の何が分からなかったかn=156
所得の基準(いくらまでが減免の対象者か)が書かれていなかった
最多は「減免のページ自体が見つからない」40%。最少は「必要書類が分からない」19%。書類の書き方以前に、ページに到達できず、対象の所得ラインも書かれていない。情報が無いのではなく、あっても使えない形で置かれている。
Q13役所に相談したかn=280
相談しなかった 183 (65%)
相談した 88 (31%)
分からない(本人以外の経験について回答) 9 (3%)
相談した人は最多でも3人に1人。3分の2は相談という行動にすら至っていない。減免は、申請の前段階である「相談」の時点で、大多数を取りこぼしている。
Q14相談しなかった理由n=181
相談しなかった理由の最多は「制度を知らなかった」77%。最少は「時間がとれない」6%。相談しないのは忙しさや面倒さではなく、圧倒的に「知らない」から。次に多い「どうせ対象外と思った」は、基準が不透明で自分から諦めた層。
Q15相談方法n=88
窓口へ直接行った 76 (86%)
電話 23 (26%)
相談方法は窓口が最多86%、電話が最少26%。多くが対面を選んでいる。だが対面でも、次の設問が示すとおり、半数が申請にたどり着けていない。相談の場に立てても、救済には直結しない。
Q16相談後どうなったかn=88
申請を希望したが、分納など別の制度を案内されて終わった
相談したできない。分割翌年も足されるなお支払いできない。
最多は「分納など別の制度を案内されて終わった」。相談できた人でも、申請書を出せたのは2割、減免が認められたのは4分の1にとどまる。相談の窓口は開いていても、その先の申請の扉がほとんど開かない。
▸ 回答者の声:「申請対象のはずなのに何度申請に行ってもたらい回しの末に却下され、挙句相談記録が一切残されていなかった」
▸ 回答者の声:「窓口で対象じゃないと言われたが、調べたら対象だった」
Q17どう断られたかn=60
最多は「申請の方法を案内してもらえなかった」35%。次いで「所得が基準を超えると言われた」「申請書を渡してもらえなかった」。断られ方の中心は、書類の不備ではなく、申請の入口そのものを閉ざす対応に集中している。
▸ 回答者の声:「承認されるにはハードルが高い。病気についてしつこく聞かれ、支出明細まで出せと」
▸ 窓口で言われた言葉:「ご主人に払ってもらってください。払えなかったらご主人の財産を差し押さえます」
Q19結果は書面で通知されたかn=44
承認され、書面で通知された 19 (43%)
却下されたが、口頭のみで書面は来なかった 6 (14%)
却下され、書面で通知された 6 (14%)
承認されたが、口頭のみで書面は来なかった 3 (7%)
結果の連絡自体がなかった 3 (7%)
覚えていない 1 (2%)
申請が却下された人のうち、書面で理由を通知された人より、口頭だけで済まされた人の方が多い。書面がなければ却下理由が記録に残らず、後から不服を申し立てる根拠が持てない。
▸ 回答者の声(申請書の受け取りを拒まれた方):「(窓口は)言葉で言いません。書面をペンや指などで指し、無言で退席します」「相手は証拠を残さない様にする対応でした」
Q20不服申立て制度の案内n=57
案内されなかった 24 (42%)
覚えていない 11 (19%)
減免が認められたため該当しない 8 (14%)
申請・決定に至っていないため該当しない 7 (12%)
書面で案内された 3 (5%)
不服申立て制度について「案内されなかった」が最多。却下されても、それを争う手段があること自体が伝えられていない。救済を断る場面で、救済を求め直す道も閉じられている。
Q21実際に起きたことn=280
家族や知人に借りた、または家族などが代わりに支払った
最多は「貯金を取り崩した」60%。少額に見える「資産を売った」13%も、売れる資産がある人だけの数字。収入が途絶えた人が、フロー(収入)ではなくストック(貯蓄・資産)を削って納税している。前年課税の負担が、家計の元本に及んでいる。
Q22生活への影響n=260
引っ越し・住み替え(同居からの独立など)をあきらめた
最多は「食事の回数や質を落とした」59%。見過ごせないのは「治療・通院をあきらめた」20%。食費の切り詰めにとどまらず、5人に1人が健康そのものを後回しにしている。
▸ 回答者の声:「税金を払うのに借金しなきゃいけない国はおかしい」「収入ゼロなのに月々64,000円」
Q23差押えを受けたかn=280
ない 200 (71%)
督促・催告は来たが差押えには至らず 64 (23%)
ある 12 (4%)
分からない(本人以外の経験について回答) 4 (1%)
差押えを受けた人は4%だが、その手前の「督促・催告は来た」を含めると影響ははるかに広い。差押えという結果より、いつ差し押さえられるか分からない予告の圧力が、多くの世帯にのしかかっている。
▸ 窓口で言われた言葉:「納付しなくても結構ですが、強制執行になりますよ」
Q25亡くなった方の住民税は遺族に請求されたかn=33
請求は来なかった(納付済み・非課税など) 12 (36%)
請求され、全額支払った 7 (21%)
請求されたが、支払えなかった 2 (6%)
わからない 2 (6%)
該当なし 1 (3%)
覚えてない 1 (3%)
回答数は少ないが、亡くなった方の住民税が遺族に請求された例が複数ある。前年の所得に対して課税されるため、本人が亡くなっても納税義務が消えず、遺族に引き継がれる。
4. 掛け合わせて見えたこと(クロス分析・全て生データで検証)
職業・世帯・地域・負担額など、属性や行動の流れを掛け合わせた分析。単独の設問では見えないパターン。
61万円
[住民税]+[国保]の合算負担
金額に両方答えた109人の平均は年約61万円、最大は約207万円(回答区分の中央値による概算)。収入が激減・ゼロになった年に、この額が課される。しかも別に年金も来る。
44%/地方 62%
[地域]×[相談の結果]
門前払い率は三大都市圏44%に対し、地方は62%。都市部より地方の窓口の方が、相談者を対象外で返す割合が高い。減免の運用に地域差がある。
33%/給与所得者 21%
[職業]×[借金に至ったか]
自営業・フリーランスの33%が納税のため借金。給与所得者(約21%)より高い。収入補償のない働き方ほど、税のために借金へ追い込まれる。
30%
[介護する家族の有無]×[治療をあきらめたか]
介護が必要な家族がいる人の30%が、自分の治療をあきらめた。世帯類型の中で最も高い(全体は20%)。介護と納税が重なり、自身の健康が最後に回される。
31%/全体 20%
[病気で収入減]×[治療をあきらめたか]
病気で収入を失った人の31%が治療・通院をあきらめた。全体(20%)の1.5倍。病気の人ほど、その病気の治療を税のために我慢している。
61%/窓口 50%
[相談方法]×[相談の結果]
電話相談の門前払い率61%は、窓口50%より高い。顔が見えない電話ほど、機械的に「対象外」で処理されている。
52%
[制度を知り相談まで進んだ人]の結末
制度を知り、相談まで行動した40人でも52%が門前払い。知識があり努力もした人の半数が弾かれる。問題は本人の努力不足ではない。
21%/配偶者 13%
[世帯状況]×[相談の結果]
一人暮らしの門前払い率21%は、配偶者がいる人13%の約1.6倍。頼れる人がいない層ほど、窓口で切り捨てられている。
40%
[国民年金]の免除状況
収入が減ったのに、年金を全額請求された(免除されなかった)人が40%。住民税・国保だけでなく、年金でも救済の網から漏れている。
5. 亡くなった方の遺族への請求(証言)
Q25で「遺族に請求された」と答えた方の自由記述(母数は少数だが、内容の重さから原文を引用)。前年の所得に課税されるため、本人の死後も納税義務が遺族に残る。
「なんの案内もありません。義務なので払ってください、借金してでもと言われました。当時19歳です。絶望しました」― 2013年、母を亡くした方
「亡くなった母の分で、次の年にいきなり督促状が来た。役所へ電話したら『本人が死亡しても関係ない。決まりだから払ってください』の一点張り。減免や免除の話は全く無かった」― 2024年に母を亡くした方
「いかなる状況下にあっても納税せよというのが役所の姿勢であり、問答無用であった」「借金もあったので相続放棄をした。手続きがとても面倒だった」― 遺族として請求を受けた方
6. 当事者が最も伝えたいこと(自由記述179件の分布)
当事者が最も多く書いたのは「前年課税そのものへの疑問」。窓口対応への怒りより、制度の根本への違和感の方が多い。さらに「他の税と比較して住民税だけおかしい」という指摘が18件――専門家でない当事者が、自力で「なぜ住民税だけ前年課税なのか」に気づいている。
「他の税金は前年の所得関係なく申請できるのに、なぜ住民税だけ減免できないのか」
「税金を払うのに借金しなきゃいけない国はどう考えてもおかしい」
「翌年度の住民税請求に怯えて、退職等を決められないなんて理不尽だ」
「国保は減免があることを納付書に明示している。税も明示して可能な限り自動適用すべき」
<参考>署名ページのコメント欄より(本アンケートとは別)
以下は、オンライン署名ページの賛同者コメント欄に寄せられた声からの抜粋です。上記アンケート(n=280)とは別に収集されたもので、集計対象ではありません。当事者の生の証言として、参考までに掲載します。
「収入0で年15万以上の請求。相談しても門前払い。妊娠して就職もできず、結局親に払ってもらった」
無収入・門前払い・就職困難
「家族ががんで入院中、その患者宛に納税請求が届いた」
闘病中への課税
「双極症で働けないのに来年60万。破産も視野。助けてください」
病気・破産の危機
「指定難病で休職。傷病手当も未支給。緊急小口資金(借入)で払った。病院へ行くのも躊躇する」
難病・借入・受診控え
「これがネックで転職に踏み切れず、パワハラに耐えている知人もいました。日本だけこんな仕組みというのもおかしな話」
職の流動性の低下
「外国人なんかは前年度の収入が把握出来ないので無税になってますよね。税の公平性の面の観点から不公平です」
課税の不公平
7. 制度改革への意見(Q27〜Q31)
Q27現年課税(その年の所得への課税)を望むかn=280
望む 264 (94%)
わからない 14 (5%)
今のままでよい 2 (1%)
Q28減免の全国統一基準を法律で定めるべきかn=280
全国一律の基準は必要(所得制限はあってよい) 149 (53%)
所得制限なしで全国一律の基準を法律で定める 106 (38%)
わからない 19 (7%)
現行どおり市区町村ごとに基準を決める 6 (2%)
Q29働けなくなった場合の住民税はどうあるべきかn=278
現在の収入の減り方に応じて減額 143 (51%)
全額免除 131 (47%)
分割や猶予で足りる 2 (1%)
わからない 2 (1%)
Q30役所が持つ情報で自動適用すべきかn=277
自動的に適用されるべき 162 (58%)
自動適用と申請の両方があるべき 111 (40%)
現行どおり窓口で申請した人だけ 2 (1%)
わからない 2 (1%)
Q31減免基準の公表を全国ルールにすべきかn=279
義務づけるべき 269 (96%)
わからない 7 (3%)
現行どおり公表するかは市区町村に任せる 3 (1%)
総括:時間差課税が収入喪失後の生活を直撃し、減免制度は救済として機能していない
本調査が浮き彫りにしたのは、住民税が前年の所得を基準に課税される「時間差課税」により、収入が大幅に減少し、あるいは失われた後にも、過去の支払い能力を前提とする税負担が課されることで、生活困窮や家計破綻を直接引き起こしている実態である。
1. 「当期収入ゼロ」に襲いかかる前年基準の重税
退職・失業(68%)や病気・けが(37%)などにより、回答者の43%が「収入が全額なくなった(10割減)」状態に陥っている。当期の収入が激減・消失しているにもかかわらず、住民税と国民健康保険料の合算で年間平均約61万円(最大約207万円)という高額な負担が前年実績に基づき一括して課される。
フロー(現在の収入)が途絶えた状態で高額な税・保険料を請求されるため、住民は貯金を取り崩し(60%)、家族・消費者金融等から借金(22%)をしてまで納付を強いられている。さらに20%が滞納して督促や催告を受けている。時間差課税は、単なる資金繰りの悪化にとどまらず、世帯の資産(ストック)を急速に枯渇させ、借金漬けへ追い込む構造的欠陥を抱えている。
2. 人権と健康を脅かす家計への直接的打撃
この時間差課税による負担は、当事者の健康や生命の維持に直結する深刻な影響を与えている。回答者の約6割(59%)が「食事の回数や質を落とした」と回答し、5人に1人(20%)が「治療・通院をあきらめた」と答えている。特に病気で収入を失った人に限れば、治療をあきらめた割合は31%(3人に1人)に跳ね上がる。病気で働けなくなった人が、時間差で襲いかかる住民税を支払うために必要な医療を我慢せざるを得ないという本末転倒な事態が生じている。
3. セーフティネット(減免制度)の不機能と構造的排除
時間差課税という制度的欠陥が存在する以上、本来であれば「減免制度」が強固なセーフティネットとして機能しなければならない。しかし実態が示すのは、住民が減免制度の存在も申請方法も十分に知らされず、「利用できなかった」という構造である。
まず、制度が住民に届いていない。制度の周知不足(知らない 68%)——減免制度の存在を知っていた回答者のうち、役所から説明を受けて知った人はわずか3%であり、役所に相談しなかった人の77%は、その理由として「制度があること自体を知らなかった」と回答している。自ら市のサイトや広報を調べても、自分が対象になるか判断できた人は6%にすぎない。
次に、相談窓口が申請を阻んでいる。窓口での高いハードル(相談者の52%が申請に至らず門前払い、申請方法の未案内 35%)により、救済網としてほぼ機能していない。最終的に申請書を提出できたのは、窓口相談した88人のうち19人(2割)にとどまる。
さらに、不承認時の書面通知や不服申立ての案内も徹底されておらず(案内なし 42%)、却下された人の半数は理由を書面で通知されず口頭で済まされ、不服申立ての案内を受けたと答えた人はわずか4人であった。時間差課税によって追い詰められた当事者から救済の道すら奪う「構造的な排除」が定着している。
4. 現年課税への抜本的転換と制度改革の必要性
当事者の自由記述において最も多く寄せられたのは、窓口への不満以上に「前年課税そのものへの疑問」(30件)であった。「収入がないのに受診を控え、借金してまで払わなければならない仕組みはおかしい」という切実な声は、制度の根本的な矛盾を突いている。
アンケート結果では、94%が「その年の所得に課税する現年課税」への変更を望んでおり、減免の全国統一基準の法制化を求める声も91%、減免基準の公表を全国共通のルールとすることを求める声も96%に達している。
そして、窓口で住民に告げられた言葉は187自治体で驚くほど共通していた。これは一部の職員や特定の自治体に起因する問題ではない。収入を失った住民に、過去の支払い能力を前提とする負担を求め、その救済を申請主義と自治体裁量に委ねる現在の仕組みそのものが、住民を生活困難、受診控え、借入、滞納へと追い込む構造になっている。